平成13年度清水小学校 学力向上対策(校内研究)
はじめに
T 研究の概要
1 研究主題
「ふるさとを愛し、自ら学ぶ児童の育成」
〜 基礎基本の習得を通して 〜
2 主題設定の理由
平成14年度から学校週5日制とともに新学指導要領が完全実施される。今年度はその実施に 向けた移行期間の最終年度である。今回、最も大きく改められた点は、既存教科の枠を越えた「総 合的な学習の時間]の新設である。本校においても、教育目標、教育課程の編成、各教科・領域 の年間指導計画、学校教育のすべてにおいて西暦2002年を視野に入れた取り組みが行われて いる。
校内における研究の実践にあたっては、清水小学校の教育活動全体を通して組織的・意図的・ 計画的に行われなければならない。今年度は研究の柱を基礎基本の習得、「総合的な学習の時間」 を通して得られる力と情報教育の推進の3点にしぼり推進していく。
21世紀に生きる子どもたちの育成を目指す教育では、国際化など急激な社会の変化に対応し て生き抜く力を身につけ、地域社会の形成のたくましい実践者になるように育てる事が求められ ている。地域には教科書や学校内だけでは得ることのできない学習内容が多く存在する。体験を通して共 感や感動の中で学習したものを本来の学習というのならば、地域社会の教育力を生かす事は大き な課題である。地域社会のさまざまな条件や環境をより積極的に取り入れた教育活動、すなわち 地域環境を教育の場として見直し、生きた教材として活用することが大切である。
これまで本校では平成9,10年度文部省指定伝統文化教育推進校として「郷土を愛し 心豊かな児童生徒の育成」を研究主題に、ふるさとを愛し、ふるさとに自信を持ち堂々と生きて いける子の育成を目指して研究、実践してきた。また平成11、12年度は新学習指導要領完全 実施までの3年計画のそれぞれ1年次、2年次としてとらえ、地域素材を活用した「総合的な学 習の時間」の開発、授業実践 行ってきた。
そこで今年度は3年計画の最終年次として、これまでの本校の取り組みを土台に、基礎的・基 本的な事項の獲得及び、地域の素材や人材を生かした「総合的な学習の時間」の授業実践を深め るとともに、情報機器を十分活用した授業実践に努め、本研究主題である「ふるさとを愛し、自 ら学ぶ子の育成」に迫りたい。
3 研究仮説
地域の人材や素材を生かした学習をとおして、基礎基本の定着や総合的な学習の時間の開発及び情報機器の積極的な活用を図れば、自ら課題を見つけ追求する児童の育成につながるであろう。
4 研究の方針
(1) 研究内容、方法等についての共通理解を深め研究主題「ふるさとを愛し、自ら学ぶ児童の育成」 に
向かってこれまでの実践研究の成果を踏まえ、発展させるように今年度の研究を深める。
(2) 日々の実践に結びついた理論研究や授業研究を行う。
(3) 全体会(理論研・授業研)及び学年部会、低学年(生活科研究)、中高(総合学習研究)の研究をもっ
て推進する。
(4) 研究時間の確保を図るため、研究日を原則として次のようにする。
@ 毎月第1木曜日を研究推進委員会とする。
A 毎月第2木曜日を全体研究日とする。
B 必要に応じて第3,4木曜日を全体研究日とする。
(5) 授業研究の計画実践につとめる。
〈研究授業の持ち方〉
・基本として全員授業とする。
・全体授業研究会は低学年部代表、中・高学年部代表が授業を公開する。
・低・中高学年部会の授業研究会は関係学年と推進委員が参加する。
(6) コンピュータ活用の研究(指定研)を中心に授業研究を推進する。
(7) TTによる授業実践を試み、指導方法の工夫・改善を図る。
(8) 基礎基本の定着に向けた、理論研究及び授業実践を図る。
5 研究の全体構想図(省略)
6 研究内容
(1)
基礎的・基本的事項の定着にむけて
(2) 総合的な学習の進め方について
(3)
情報教育の推進について
U 研究実践
1 理論研究
(1)基礎的・基本的事項の定着に向けて (読み・書き・計算)
日本女子大教授の吉崎静夫は、新教育課程で育成すべき学力を大きく2つに分けて考えている。
不易の学力 流行の学力
@ 基礎的な学力 と A 実践的な学力
伝統的な学力としての「基礎的な学力」
新しい学力としての「生きる力」
@基礎的な学力は「読み、書き、計算」といった学力であって、教科等の学習の基礎となるものである。
もちろんこの学力は、学校教育ばかりでなく将来の社会生活の基盤となるものである。そしてもう一つが、 学習指導要領で示されている各学年の目標と内容に基づく教科等の学力である。これらの基礎的な学力 を身につけるためには、「繰り返し学習」や「ドリル学習」等にある程度時間を費やしたり、必要に応じて習 熟度別学習を導入するなどの「学習集団の弾力化」多様はティームティーチングの形態を取り入れる事が ポイントとなる。
A実践的な学力は、教科等で身につけた学力をふまえながらも、教科の枠を越えて現実の社会的課題(環 境、小子、高齢化、国際化、情報化、平和問題など)や自らの生き方に関わる課題を発見し、解決しようと する学力である。総合的な学習はまさにこの学力を育てる事にある。つまり、総合的な学習では、社会的 課題や生き方課題を「他人事」ではなく「自分事」として主体的・能動的に関わることが求められる。
上述した2つの学力のどちらか一方だけを育成しても、新教育課程で求められる児童は育成できない。両者に目配りし、バランスをとることが大事である。清水小学校では基礎的な学力の獲得を基に、実践的な学力の育成が効率よく図れると考える。「生きる力」の育成を@Aの学力の両面から考えていきたい。
(2)「総合的な学習の時間」について
@ 「総合的な学習の時間」目標
[全体]
○ 身近な環境に目を向け、その環境と主体的に関わっていこうとする態度や豊かな心を育てる。 ○ 情報化に対応する能力を育てるとともに、学習の個別化や問題解決学習の能力を育てる。 (コンピュータリテラシーの習得) ○ 他人との関わりを大切にし、地域の一員としての自覚を育成する。 |
各学年の目標 | |
1年 | ○ 自然の不思議さやおもしろさを、身近な動植物を事例に考えようとする子。
○ コンピュータの操作に慣れる。 |
2年 | ○ 自然の不思議さやおもしろさを、身近な動植物を事例に考えようとする子。
○ コンピュータの操作に慣れる。 |
3年 | ○ 自然の不思議さやおもしろさを、身近な動植物を事例に考えようとする子。 ○ コンピュータの基本的な操作を身につける。 |
4年 | ○ 身近な環境や地域に対して自分との関わりに興味関心を持ち、問題として捉えようとする子。 ○ コンピュータの基本的な操作を身につける。 |
5年 | ○ 身近な環境や地域に対して自分との関わりに興味関心を持ち、問題として捉えようとする。
○ コンピュータの学習を通して、資料を選んだり、自分の意見を相手にわかりやすく伝えようとする子。 |
6年 | ○ 身近な環境や地域に対して自分との関わりに興味関心を持ち、問題として捉えようとする子
○ コンピュータの学習を通して、資料を選んだり、自分の意見を相手にわかりやすく伝えようとする子。 |
1 「うきうきタイム」の時間で児童に身に付けさせたい力(資質・能力)
○ 「生きる力」の育成を基本とし、知識を一方的に教え込む教育から子どもたちが、自ら考える教育の展開 に努め、児童の主体的、意欲的学習活動の育成を目指すとともに、知・徳・体のバランスの取れた、豊か な人間性とたくましい体を育んでいく。
○ 自ら課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断し、より良く問題を解決する資質や能力を育成する。
○ 情報の集め方、調べ方、まとめかた、報告や討論の仕方などの学び方やものの考え方の能力を育成する
○ 問題の解決や探求活動に主体的、創造的に取り組む態度を育成する。
○ 地域に根ざし、ふるさとを語れる子を育成する。
学習の4つのステップ
・「生きる力」が求められている背景
子ども達の現状 @ゆとりのない生活 C自立の遅れ A社会性の不足 D健康の問題 B倫理観の低下 E体力の低下 |
家庭や社会の現状 @家庭の教育力の低下 A地縁的な地域社会の教育力の低下 |
これからの社会の展望 @変化の激しい、先行き不透明な厳しい時代 A国際化、情報化の進展 B科学技術の著しい発展 C地球環境問題、エネルギー問題 D高齢化、小子化の問題 E男女共同参画社会 |
そこで
「生きる力」の理念が打ち出された。
「生きる力」の要素 知) 問題解決能力、情報活用能力 徳) 豊かな人間性 体) たくましく生きるための健康や体力 「総合的な学習の時間」を通して付ける力 |
総合的な学習の時間のねらい
@自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく
問題を 解決する資質や能力を育てること。 A学び方やもののの考え方を身に付け、問題の解決や探求活動に主体的・ 創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるよ うにする。 下線の部分を本校では「学ぶ力」と捉える。「学ぶ力」の育成すなわち「生きる力」の育成である。 |
・「総合的な学習の時間」に必要な学習技能(18の基礎基本)
愛知教育大学教授、有田和正氏は総合的な学習の時間を、各教科を基礎基本にした応用発展学習ととらえ、次のような総合的学習に必要な学習技能を示している。
清水小学校では、各教科、道徳・特別活動などを通し、また「総合的な学習の時間」の中でこれらの学習技能を育てる工夫をする。
@ はてな?発見の技能(問題解決で最も大事な技能、いつでもはてな?を持つ心)
A 国語辞典の使い方 (1年生から、言葉を書いて付箋をつける) B 事典の使い方 (百科事典、社会科事典、理科事典) C 教科書の使い方 (基礎基本がつまっている、資料としても活用) D 資料集の使い方 (情報の宝庫、目次や索引を使って) E 地図帳、地球儀の使い方 (国際理解の出発点、地図記号、索引の使い方) F 発言・発表の技能 (話形表をもとにわかりやすく発表する) G 聞き方の技能 ( 自分の求めていることを聞く ) H おたずね技能 ( 電話、はがき、手紙、マナー等 ) I 観察の技能 ( 見る・良く見る・見続ける・見抜く ) J 実験の技能 ( 実験方法を工夫する、飼育も含める ) K 見学の技能 ( アポイントの取り方、広い視野で見る、マナー) L 書く技能 ( 手際よくメモを取る・ 要点を書く ) M 本を読む技能 ( 要点がわかる、暗記してスラスラ読める ) N コンピュータを使う技能 ( インターネット・HP検索・CDソフト ) O 考える技能 ( 事実と事実を関係付ける ) P 情報を集める技能 (どこで、だれに聞けば、どんな情報が手にはいるか) Q 話し合いの技能 (話題をはっきり) |
・「総合的な学習の時間」の評価
総合的な学習においては、一体、「何のために」、「何を」、「どんな観点で」、「どのよう
に」評価しなければならないのであろうか。総合的な学習のねらい
、教課審の答申をもとに考えてみる。
何のために評価するか
総合的な学習のねらいは簡単に言うと「生きる力」の育成である。ということは、「生きる力」を育成するために評価すると考えなければならない。
何を評価するのか
「生きる力」は別項で述べたように端的に言うと「問題解決能力・情報活用能力」と「豊かな人間性」であり、「たくましく生きるめの健康や体力」がその基盤であるとした。ということは、学習内容に対する理解度、問題解決能力・情報活用能力と豊かな人間性の形成を評価すると考えられる。
どんな観点で評価するのか
教課審の答申では観点として、1.学習者のよい点、2.学習に対する意欲や態度、
3.進歩の状況など、の3つが挙げられている。
どのように評価するのか
答申では、活動や学習の過程、報告書や作品、発表や討論などに見られる学習の状況や成果などについて評価することを挙げている。
また、「総合的な学習」では自己評価能力を育成すること、支援のための評価活動をする事が大事である。
以上の「何のために」「何を」「どんな観点で」「どのように」を考慮し、また自己評価能力
の育成、児童の学びを支援する評価という観点から、清水小学校ではポートフォリオ評価と教師側で作成し一人一人の学びを把握するために「学び表」による評価を取り入れ実践していく。
・児童の「学ぶ力」を育てるポートフォリオ評価
子ども達の学習の足跡を残し、自己評価を支援するためにポートフォリオ評価を取り入れた。
ポートフォリオ評価とは、書類ケース・紙ばさみをさす言葉でもともとは証券会社の社員が複数の証券を書類入れに入れまとめたものをさしていた。
教育におけるポートフォリオは、答申にあるような様々な学習情報(活動や学習の過程、報告書や作品、発表や討論などに見られる学習の状況や成果などを学習者が記述したり、作成したものや教師側からのアンケートや観察記録等)をまとめ、学習中や学習後の自己を見つめる評価資 料として、また教師が児童の学びを支援する材料して活用することができる。
収集の場合大切なことは、「収集の目的(評価項目)」をしっかりと定めて収集項目を決定する事、教師による観察記録やアンケートやコメントの添付、児童相互の評価活動、いつでもどこでも自分の学びを振り返りチェックできる工夫をしてファイルする等が挙げられる。
ポートフォリオの要素
清水小学校ではポートフォリオ評価の導入にあたり、富山大学教授の安藤輝次氏の示したポートフォリオの構成要素を参考に、初歩的なレベルの指導をめざし5つの要素を設定する。
初級 ↓ 中級 ↓ 上級 |
@個人や班で持ち、個性的な学びのファイルとして活用する
A年月日順で集め、下書きや失敗作も含め多角的にファイルする Bいつでもどこでも評価する(自己評価・相互評価・教師のコメント) @ABの手順で収集していく なれてきたら、 Cの発表会を開き 学習成果を共有させる。 Cポートフォリオの発表会を開き、子どもの学びを認め励ます。 自己の「学ぶ力」を高い次元から振り返ることができるよう、 評価の観点を設定する。 D評価の観点を子どもと共に設定し、「学ぶ力」のスキルアップを図る。 |
※ 自己評価の観点設定の例
ポートフォリオの構成要素Dで設定する観点は、総合的学習のねらいである
・ 自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく
問題を解決する資 質や能力を育てること。 ・ 学び方やもののの考え方を身に付け、問題のも解決や探求活動に主体的 ・ 創造的に 取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにする。 |
下線で示した部分(学ぶ力)の力を、子ども自身が認識し、獲得させるために設定しなくてはならない。しかし、言葉が難しいので、下記のアイテム(コンピュータゲーム用語で武器、道具の意味)と言う言葉を使ったらどうだろうか?
頑張りアイテム ・・・ 自分のがんばりはどうだったか? 調べ方アイテム ・・・ 自分の調べ方の技能について、工夫したこととか まとめ方アイテム ・・・ 自分のまとめ方は成長したか?みんなに分かるように工 夫したことを自己評価する。 発見アイテム ・・・ 活動して新しい事に気付いたり分かったりしたことを自 分で評価する。 実践アイテム ・・・ 活動して学んだことを、自分の生活に生かしたかを評価 友だちアイテム ・・・ 友だちと協力して活動したり、友だちの考えや意見をし っかり聞き、それを生かしたか?自己評価する |
・児童の学ぶ力を支援する「学び表」による評価
総合的な学習の中で、児童一人一人の「学ぶ力」支援するために、以下の3つの評価の観点を設定し評価していく。
[関心・意欲・態度]
身近な環境(久米島の自然や文化、人)に対して興味・関心を持ち意欲的に学習しようとする。
[問題解決力]
体験的活動を通して、自分で課題を見つけるとともに、学習の中で身につけたスキルを駆使し、見通しを 持 って追究しようとする。
[生き方(人との関わり)]
他人との関わりを大切にし協力して課題解決に取り組み、学習を通して身につけた事を生活の中で生かそ うとする。
具体的な評価の方法は次の通りである。
@ まず、単元全体を見通し上述した3つの観点に関わると予想される活動を抽出する。
抽出する活動は、その単元で特に重視したい学びを選ぶようにする(各過程2〜3項目)
A 抽出した活動を4つの学習過程に従い並べていく(簡潔に表記する)。
B 一人一人の活動を、単元の途中又は最後に[良い]3
[普通]2 [もう少し]1
で個票に書き込んでいく。評価の材料は、ポートフォリオ評価を中心に据え、その他
観察法、感想文、面接、ワークシートを参考にしていく。
C 評価の結果を、成績処理ソフト「竹千代」で処理し、レーダーチャートに表してその子の学びの様子
を確認する。落ち込みがある場合は、個別に指導していく。
(3)情報教育の推進
・情報教育とは(指導のポイント)
・情報活用の実践力とは
・「総合的な学習」における情報教育
・コンピュータ学習指導計画
・コンピュータ学習リテラシー(各学年)
・インターネット利用ガイドライン
・職員研修の充実
2 各学年の実践研究
V 研究の成果と課題 これからの作業・・
W 資料
・ 地域人材バンク
・ 指導要領の解説 その他